診療情報
口の中の菌が脳に悪影響を及ぼす
脳に悪さをするミュータンス菌
昨年冬、唾液中の菌であるcnm陽性ミュータンス菌は、脳の微小出血の原因になっているということが報告されました。研究チームは2016年に、脳出血患者の方が、そうでない人よりcnm陽性ミュータンス菌の保有率が高いという関係を発見・報告しています。今回は保有者と非保有者を追跡調査して、保有者には微小な脳出血の出現率が4.7倍もあったと報告しました。ミュータンス菌が、脳の細かい血管に何か悪影響を及ぼしていることは間違いなさそうです。研究チームは、cnm遺伝子を持っている菌は血管内のコラーゲンと結合でき、それが炎症の原因になって、血管を壊しているのではないかとの仮説をたててします。ミュータンス菌が血管内に入るには、口内での出血が必要です。口内の出血は、主に口内炎や歯周病で起きます。丁寧な歯磨きは、ミュータンス菌を減らし歯周病予防にもなるので一石二鳥です。
口中細菌の脅威は他にも…
歯周病と言えば、その原因菌の代表格であるPジンジバリスは、とてつもなく恐ろしいことが知られています。動脈硬化を起こした人のうち3割の冠動脈からDNAが検出され、アルツハイマー病患者の脳内でも発見されています。タンパク質を強力に分解する能力を持ち、どちらの場合も患部で何か悪さをしていた可能性が濃厚です。
昨年冬には、血中のPジンジバリスが代謝異常を引き起こして筋肉を壊させているかも知れないという報告もされています。
ちなみにPジンジバリスは、その増殖に鉄が必須で、血清鉄(ヘム)に出会うと活性化し病原性を増します。つまり血が大好物です。歯周病で出血が始まったら、すぐに対処しないと大変なことになる理由の一つです。
引用:ロハス・メディカル ‘20.12月より