診療情報
糖尿病なら歯周病も治して
糖尿病と歯周病が、相互に深く関わっていることが分かってきた。糖尿病だと歯周病になりやすく、歯周病だと糖尿病が悪化しやすい。そうした悪循環が、いずれの治療をも難しくする。専門家は、一緒に治療に取り組めばより効果が見込めるとして内科と歯科の連携の必要性を指摘し、患者にも早期から歯科に通うよう勧めている。
→治りにくい患者
「歯科の現場では歯周病治療を続けてもなかなか治らない糖尿病患者がいます」と歯科医で日本歯科医師会常務理事の高野直久さん。歯茎の出血や腫れや歯のぐらつき、強い口臭などの症状が目立つという。日本大とライオン歯科衛生研究所が2009年に発表した約2500人が対象の研究結果によると、空腹時血糖値や過去1~2ヵ月の平均血糖値を反映する「HbA1c」という数値が基準を超えると歯周病が増加し、糖尿病と歯周病が関連していることが示されている。
糖尿病は歯周病をどのように悪化させるのか。高野さんによると、糖尿病では微小な血管が傷んで歯茎の血流が滞るため、歯周組織が壊れると治りにくい。さらに糖尿病では免疫力が低下し、脱水のため唾液も減って歯周病の原因細菌の感染が広がりやすいという。
→炎症物質が悪さ
では、歯周病が糖尿病を悪化させるとはどういうことか。にしだわたる糖尿病内科(松山市)の西田亙院長は「歯周病の慢性的な炎症が悪さをしている」と指摘する。歯周病は、全身感染症などと比べて炎症としては軽微だが、慢性化すると長い間じわじわとサイトカインが放出され、糖尿病にも悪影響があると西田さんは考えている。
歯周病は間接的にも妨げだ。糖尿病の栄養指導では「野菜を多めに、よくかんでゆっくり食べて」と指導するが「歯が悪いと軟らかく、味の濃いものをよくかまずに食べるようになる」と西田さん。
引用:夕刊フジ 2018年6月26日 9面