診療情報
健康寿命と咀嚼 食品の多様性が重要
口腔の機能には咀嚼(そしゃく)、会話、外観(表情)等が挙げられますが、まずは咀嚼です。咀嚼とは食べ物を粉砕して嚥下(えんげ)しやすくすることです。高齢者では嚥下の問題が大きく取り上げられていますが、食塊形成がうまく作られることが重要となります。
食塊形成は、われわれがよく知る「餅つき」とよく似ています。臼と杵(きね)は口腔と歯、つき手は咀嚼筋、返し手は舌運動、唾液は手返しの水、つきあがった餅は嚥下可能となった食塊であると考えると分かりやすいです。出来の良い餅を作るためにはそれぞれの役割分担がしっかりし、息が合っていなければなりません。個人の咀嚼に問題があれば、餅つきになぞられて考えることで問題の所在を知ることができます。
健康寿命を延ばすためには食品の多様性が重要と考えられています。よくかめる人は摂取できる食品のバリエーションが大きく、多くの食品を摂取できます。その結果、吸収できる栄養素も豊富な種類を含んでいるといえます。
かめない人で不足している栄養素は、タンパク質、脂質、カルシウム、鉄、ビタミンB2であるというデータがあり、骨粗しょう症、貧血、皮膚障害など、高齢者の健康維持に直接影響する栄養素の不足が考えられます。
優れた咀嚼能力は献立の食材の多様性、食品群の栄養素の多様性をもたらし、その結果健康寿命が延びると考えられています。
(福島県歯科医師会)
引用:福島民報 2017年9月18日 朝刊 7面