診療情報
むし歯菌と歯周病菌の関係
むし歯菌の正体
歯を失う原因の7割近くがむし歯と歯周病で、どちらも口の中の細菌によって引き起こされます。
むし歯菌として有名なミュータンス菌は、酸素がある状態で生育できる菌で、歯の表面に定着して増える性質があります。また、砂糖を酵素で分解して自らの栄養とし、歯垢のネバネバ成分を生成します。このネバネバにはグルカンや乳酸などの有機酸が含まれており、これが付着することで歯が溶け、むし歯になります。
歯周病菌の正体
歯周病菌の多くは糖を分解してエネルギーにすることができず、たんぱく質を栄養素としています。また、酸素を嫌う性質があるため、酸素の少ない歯肉ポケットの底で生育します。
歯周病になって深い歯周ポケットができると、さらに酸素の少ない環境が整うので、歯周病菌はさらに増殖ます。また、炎症のある歯肉ポケットでは、血液の成分が染み出してきます。この中にアルブミンなどの血漿タンパク質が含まれ、それが歯周病菌の栄養素になります。
このように、むし歯菌と歯周病菌は生育に最適な環境が異なるため、むし歯菌は歯の表面、歯周病菌は歯周ポケットといったようにすみ分けをしています。むし歯菌が優位になると、歯垢の中のむし歯菌によって有機酸が多く作られて、酸性の環境となります。歯周病菌は酸性の環境下では生育しにくいため、歯垢の中の歯周病菌の比率が減少します。
とはいえ、どちらの口腔トラブルも防ぎたいもの。歯科医院で専門家の指導を受け、むし歯も歯周病も予防しましょう。
引用:神戸新聞 23.1.23