診療情報
老後、みんなが「歯」で後悔している
以前、シニア1000人(55歳から74歳の男女)を対象に「今、何を後悔していますか」と尋ねるアンケートを行ったところ、健康面では、運動不足や食事の不摂生、毛髪の手入れ不足などを上回り、「歯の定期健診を受ければよかった」がトップになりました。「もっと歯を大切にすればよかった」と思わせる現象が、この年代に入ると起こるのです。
歯周病という感染症の症状は、全身の病気を引き起こす寿命の関係する怖い兆候です。では、なぜ歯周病菌が全身の病気を引き起こすのでしょうか?
歯肉に腫れが起こると、体はリンパ球や白血球を集結させて炎症を抑えようとします。このとき、歯肉にはリンパ球を送り込むための新しい血管が作られます。この血管の中に歯周病菌が入り込み、全身へと流れていってしまうのです。さらに、この菌は細胞膜そのものに毒があり、全身の血管をめぐり始めた歯周病菌は、あちこちで血栓を作って血管に付着し、血液の通りを悪くします。これが心臓に近い冠動脈で起これば心筋梗塞、脳血管で起これば脳卒中、腎臓の血管が詰まれば腎不全になります。
また、歯周病は糖尿病、誤嚥性肺炎とも関係する上、歯周病が進み歯がなくなると、認知症になる可能性も高まります。名古屋大学の調査では、アルツハイマー疾患者は健康な高齢者に比べて、残っている歯の数が平均して3分の1しかありませんでした。つまり、歯の保有数や治療の有無は、脳の萎縮にも関係することがわかったのです。
健康の後悔トップ5 シニア1000人「歯」で後悔
1.歯の定期健診を受ければよかった(283pt)
2.スポーツなどで体を鍛えればよかった(244pt)
3.日頃からよく歩けばよかった(234pt)
4.腹八分目を守り、暴飲暴食をしなければよかった(210pt)
5.たばこをやめればよかった(122pt)
引用:PRESIDENT 2019.4月号