診療情報

歯ぎしりはなぜ起こる?

浅い眠りのとき、頬の筋肉が過度に収縮

睡眠中の歯ぎしりには、上下の歯をギリギリと横にすり合わせるグラインディングと、あまり音を立てず強く噛みしめるクレンチング、その両方が混在したタイプがあります。いずれも珍しいものではなく、人口の5~15%が睡眠中に歯ぎしりをすると言われるほど。それどころか、だれでも寝ている間、多少は歯を合わせています。ただ、一定以上の強さや回数だと、後述するような悪影響があるため対処が必要となります。

なぜ歯ぎしりをするのか、くわしい原因はわかっていませんが、遺伝や飲酒、喫煙、カフェイン摂取、ある種の抗うつ薬の服用、ストレスなどの関与が指摘されています。

じつは歯ぎしりは、浅い眠りのときに起こることがわかっています。人間は深い眠りと浅い眠りを交互に繰り返し、深い眠りのとき筋肉の動きは抑制されています。そして眠りが浅くなると抑制が解け、その拍子に咬筋(頬の筋肉)が動き、歯ぎしりが起こると考えられるのです。先にあげた飲酒や喫煙、ストレスなどは、睡眠を浅くする要因であり、とくにストレスは、歯ぎしりの7~10%に関与していると言われます。

特定の遺伝子型の人は、ほかの人の約5%、歯ぎしりをしやすいことがわかっています。また、睡眠時無呼吸症候群の人は眠りが浅く、歯ぎしりをしやすい傾向にあります。胃酸が食道に逆流する逆流性食道炎も、眠りが浅くなるので歯ぎしりの原因になると報告されています。

歯ぎしりはなぜ悪い?

歯が削れたり折れる。ほかの疾患の原因にも

ある研究によると、睡眠中の歯ぎしりの際に出る力は、日中、意識して思い切り噛みしめたときに出る力よりも大きくなることがあります。中には、ギリギリと5分間も歯をすり合わせる人や、一晩で計何十分も歯を食いしばっている人もいます。

歯ぎしりを続けると、多くは歯がすり減ってしまいます。また、歯が欠けたり、根っこから折れたりすることもあります。歯が何本も抜けている場合は、残った歯に力が集中するので、なおさらその歯が短くなってしまいます。以前は、噛み合わせが悪いから歯ぎしりをすると言われていましたが、今は反対で、歯ぎしりをするから、噛み合わせが悪くなることがわかっています。

せっかく入れたインプラントやセラミックの歯も、欠けたり割れたりします。また、歯が揺らされることから歯周病が悪化することもあります。さらに、顎に負担がかかり、顎が開きづらくなる顎関節症を引き起こすこともあるのです。

診断と治療の進め方は?

リスク因子を取り除き、歯を保護する。

強い歯ぎしりを繰り返していると同室の人に指摘された場合、一度、歯科を受信することをお勧めします。歯科では、多くの場合、その指摘や歯の摩耗の状態、起床時の筋肉の痛みやこわばりがないか、また顎の筋肉が発達してエラが張っていないか、などの点から診断をつけます。

治療にあたって、まず睡眠時無呼吸症候群や逆流性食道炎が疑わしい場合は、その診療科に紹介します。そうでない場合は、飲酒の制限や禁煙のアドバイスなど、眠りを深くするための生活の改善を勧めます。

それでも治まらない場合や、歯の摩耗が進み、すぐに保護したほうがいい場合は、睡眠時に樹脂製のマウスピースをかぶせるスプリント療法を行います。歯や顎にかかる圧力が低減し、歯の摩耗やインプラント、詰め物の欠損を防ぎ、歯周病悪化や顎関節症の予防にもつながります。

多くは2回程度の受診で、自己負担額は、4000~5000円程度です。

家庭でできることは?

子どもは様子を見る。大人は生活改善から

子どもは大人に比べて歯ぎしりをする場合が高いようです。これは、子どもは睡眠の構造が未成熟で、浅い眠りと深い眠りを多く繰り返し、睡眠のリズムが整っていないため。

成長に伴って睡眠のリズムが整うと、自然に歯ぎしりもしなくなっていくケースが大半です。子どもの歯ぎしりは、それほどひどくなければ、様子を見てもいいかもしれません。

大人の場合は、歯ぎしりに心当たりがある場合は、節酒や禁煙、カフェイン飲料を飲む量を減らすなど、睡眠が浅くなるような生活を心がけましょう。また、不用意な昼寝を避けて生活習慣を整えることや、寝る前にストレッチをしたり、ぬるめのお風呂にゆったり入るなど、ストレスを軽減する工夫も必要です。これらは、歯ぎしりだけでなく、全身の健康にとってもいいことなので、ぜひすぐに実践したいものです。

また、歯ぎしりで顎の筋肉がこわばる場合は、筋肉をもみほぐすようにマッサージするといいでしょう。

歯の先が平らになっていたり短くなっているようなら、早めに受診することをお勧めします。歯ぎしりで歯が短くなっても、むし歯などのような痛みはありません。一度、鏡で観察してみてはいかがでしょうか。

引用:雑誌「パンプキン」 ‘13.9月

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「口からはじまる健康づくり」

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野村院長

院長が「きわ歯科クリニック」を誕生させた道のりを、歯科免疫学のお話を通じてご案内します。詳しくは、理念・誕生までの道のりをご覧ください。

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